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【究める vol.141】大学院の授業をのぞいてみよう!⑦ 公共経済学Ⅰ(経済学研究科)

2024年06月21日

「究める」では、大学院に携わる人々や行事についてご紹介しています。今回は「大学院の授業をのぞいてみよう!」の7回目として、経済学研究科の「公共経済学Ⅰ」(中村 彰宏(なかむら あきひろ)教授)の授業の様子をお届けします。

授業概要

公共経済学Ⅰについて

担当教員の中村 彰宏教授は、公共経済学を専門とし、情報通信市場と道路交通市場の規制・競争政策について研究しています。

この授業(公共経済学Ⅰ・Ⅱ)では、公共経済学で市場・非市場取引を分析する手法を明らかにします。前期に開講している「公共経済学Ⅰ」では、伝統的な経済学と行動経済学の視点から現実の政策理論を学ぶとともに、それを評価する実証的ツールについて学んでいます。後期に開講する「公共経済学Ⅱ」では、厚生経済学の基礎理論と所得分配の理論を中心に学ぶ予定です。

授業では、テキストや論文の購読を担当学生が報告をするとともに、文献にない視点やより深い理論的背景等を担当教員が解説する形で進めており、公共経済学の理論を習熟して、現実の政策に応用できる能力を養うことを目標としています。

本日(5月31日)の授業について

今日の授業では、公共経済学の一環として、コンジョイント分析について学びました。コンジョイント分析は、消費者の選好を分析するための重要な手法であり、特に喫煙習慣と時間選好および危険選好の関係を経済学的視点から理解することが目的です。本章を通じて、喫煙者と非喫煙者の行動パターンの違いを明らかにし、喫煙対策や禁煙支援プログラムの効果的な設計に貢献することが期待できます。はじめにコンジョイント分析の基礎として、RPデータとSPデータの特徴や利点、分析方法について、分析の手順を学びました。その後、時間非整合性と割引効用理論をはじめとした消費者の行動分析についてを学び、実用的な内容で有意義な内容だったと思います。コンジョイント分析の手法は、他の公共経済学の問題にも応用できるため、幅広い研究分野での活用が期待できます。他の研究例などを教授に挙げていただいたため、活用の仕方なども同時に学ぶことができました。各学生も、自身の研究に活かせるような講義内容でした。

履修者の声

本日の授業はいかがでしたか

現在、データサイエンスを経済学に適用するためのテキストを用いて、履修している学生がそれぞれの章のレジュメを作成してみんなにシェアすることを講義中に行なっています。今日の授業では私が報告を担当していたので、レジュメを共有して発表を行いました。本日の内容は一言でまとめると、「コンジョイント分析を用いた依存性の研究について」です。タバコやお酒、ギャンブルをはじめとした依存度が存在する要素間にどのくらいお互い影響し合うのかをどのように分析したら明らかになるのかを学びました。補足をしても理解度が足りないところは、教授が面白い例を交えて教えてくれるので楽しかったです。

(ファース サミュエル一輝さん)


公共経済学Ⅰの授業方式は基本的に履修者がテキストの輪読と発表し、中村先生が補足説明をするという形です。本日の発表は、“コンジョイント分析の技 ―表明選好分析”という理論と実例が組み合わさった内容でした。履修生の分かりやすい解説に中村先生の補足を加えてくださり、テキストに記されてない知識と織り交ぜることで、コンジョイント分析の基本的な手法やモデルを分かりやすく理解することができました。

(方 飛竣さん)


今回の授業はコンジョイント分析調査票について学習しました。アンケートの取り方に経済学が使われていることを知りました。「属性の選定」「プレテスト」など何気なく過ごしていた日々に経済学があります。

(川久保 寛潤さん)

この授業(公共経済学Ⅰ)を通じてどのような学びや発見が得られますか

私は、オーストラリアや日本の小売業・卸売業における新商品の感度分析を研究する予定です。履修するまでは、公共経済と研究内容との関連性を見出せていませんでした。しかし講義を受けているうちに、今まで持っていた視点に公共経済学という新しい視点を加えて自身の研究をみてみると、新しい気づきや面白さに気がつくことができました。例えば、両国の政策がどのくらい新商品の売れ行きに影響するかなどが挙げられます。自身の研究に必要な分析手法も学べるので、毎週楽しく講義を受講しています。

(ファース サミュエル一輝さん)


公共経済学Ⅰの授業を通じて、ビッグデータの集積や人工知能の活用が求められている現代社会に適した、データサイエンスを駆使した経済学を学ぶことが中村先生の考えです。我々履修生は因果推論や機械学習などを用いるデータ分析の手法だけでなく、適切にデータを取得する調査・実験の手法を並行して学ぶことができました。専門知識以外のことにも、親しみやすい先生のおかげで発表という授業方式に慣れることができ、自分の発表内容の不足にも気がつきます。

(方 飛竣さん)


何気ない日々に経済学が潜んでいることに多く気づけています。

(川久保 寛潤さん)

この授業を通じて得られる学びや発見とご自身の研究や将来とのつながりを教えてください

私は、オーストラリアや日本の小売業・卸売業における新商品の感度分析を研究する予定です。履修するまでは、公共経済と研究内容との関連性を見出せていませんでした。しかし講義を受けているうちに、今まで持っていた視点に公共経済という新しい視点を加えて自身の研究をみてみると、新しい気づきや面白さに気がつくことができました。例えば、両国の政策がどのくらい新商品の売れ行きに影響するかなどが挙げられます。自身の研究に必要な分析手法も学べるので、毎週楽しく講義を受講しています。

(ファース サミュエル一輝さん)
 

私の研究テーマは交通経済学であり、公共経済学Ⅰの授業で学んでいる内容は、様々なデータの収集・処理手法だけでなく、それらのデータを用いる経済学モデルと密接に関連しています。将来的には、交通経済のような地域、人口、移動など様々なデータを取得し、分析して結論を出す必要がある分野では、データサイエンスを駆使した経済学を学ぶことがまず必要なことです。この授業で学んだ手法を研究に用い、自分の修士論文を完成する他に、将来的に従事する仕事もそれらの研究手法を用いることができる可能性があります。

(方 飛竣さん)
 

私は将来地元に帰り地元の地域創生や活性化をしたいと考えていて、どのようにアプローチするかをいろいろな経済学的視点で学習したいと思っています。この授業(公共経済学)も、多角的視点の一つとして学んでいます。

(川久保 寛潤さん)

学部と比べた際の大学院での授業の特徴を教えてください

学部の授業と比べて大学院の講義は、知りたいことを追求できる面白さがある講義だと思います。私は、中央大学国際経営学部でマーケティングをはじめとした経営学などを中心に英語で勉強していました。学部は様々な分野を学べるよい環境ではあったのですが、知りたいことを深く追求することができませんでした。しかし、大学院ではその分野の専門家である教授からより近く、より詳しく学ぶことができます。また、講義は少人数で教授と1:1で行われる場合も稀にあります。気が抜けないから大変そうだと感じるかも知れませんが、興味のあることであれば楽しいと感じます。他の授業でも異なる学問を勉強している学生と関わる機会があるため、勉強することが楽しく感じられます。

(ファース サミュエル一輝さん)
 

大学院の授業は、学部の授業と比べてより専門的であり、深い議論や批評が行われます。学部では基礎的な知識や概念を獲得することが中心ですが、大学院ではより高度な理論や実践的な応用に焦点を当てます。また、履修生同士の専門性が高いため、授業やセミナーでは積極的な参加と深い議論が求められます。さらに、研究活動や実務経験を積んだ教員や実務家が多く、実践的な視点からの学びや研究指導が期待できる点も大きな特徴です。

(方 飛竣さん)
 

学部生の時の講義は先生から先生の話を聞くだけのものが多かったです。一方、大学院では学生側が発表して教員がコメントしたり会話がメインで、距離が近く深く学ぶことができます。講義も少人数形態が多く、専門家である教員の知識をたくさん得ることができます。

(川久保 寛潤さん)

中村 彰宏教授からのコメント

公共経済学の理論はやや抽象的な面もあります。そのため、初めて学習する際には難しいと感じる面もあるかもしれません。でも、なぜそのような理屈が現実の政策の議論をする際に議論しておくべきなのか、それを感じることができればそれを理解したい気持ちになると考えています。
また、大学院生は学位論文(修士論文や博士論文)を執筆しなければなりません。修士課程(博士前期課程)で社会に出る学生にとっては、修士1年で効率的に勉強することも重要です。公共経済学に関連して、現実の政策や消費者行動を分析する実証分析手法を具体的に学ぶことは、学位論文を書くための近道だと考えています。実証分析も背景には難しい統計理論がありますが、実際に手法が使えることが分かれば、それを理解したいという気持ちになると考えています。
一緒に楽しく学べる学生が本研究科に来てくれることを楽しみにしています。